今年度は、研究計画の2年度目に当たる。昨年度行ったドイツでの聞き取り調査をふまえて今年度は、ドイツ法についての文献研究を中心に研究を進めた。今年度研究の中心に置かれたのは「子どもの福祉」確保の緊急性とその緊急性に法的保護手続きがしっかりと対応しているのかどうかということである。具体的には次の通りである。すなわち、親権制限を伴うような子どもの保護が必要な場合、子どもの時間感覚を考えると、親権制限の必要性に関する司法判断は迅速になされる必要がある。他方で、親権制限(たとえば、親権の一時的な停止や親権喪失)は、親の権利の制限という側面ももつので、その判断は証拠に基づいて慎重に行われねばならないという要請も存在する。この場合の判断基準は子どもの精神的・身体的・情緒的な福祉を阻害するかどうかに置いてその阻害の事実もしくは可能性に基づいて判断せねばならない。この判断が迅速になされねばならないのは、子どもが親から一時的に引き離されている期間は極力短くなければならないからである。日本で児童虐待防止法の施行に伴って一時保護は2ヶ月以内とするようにという指針が出されたが、2ヶ月では長すぎるといわざるをえない。さらに、この一時保護期間中、ならびに、親権制限が行われた後、法的な保護者が存在しないならば、それは子どもの権利を確保したり、代位行使したりする者がいないということで、子どもは法的に無権利状態に置かれることにもなる。法的に無権利状態に置かないために未成年者後見制度が利用・拡充されねばならないのである。さらに、未成年後見についても、私人の後見人を探すのが困難であることを考えると、公的後見制度、場合によっては成年後見制度にならって団体後見制度の創設の必要性が高いという結論を得るまでに至った。
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