本研究の目的は、親権制限制度と子どもの福祉もしくは子どもの最善の利益をいかに保証するかという制度がドイツにおいてどのように構築されているかを明らかにし、それと日本法とを比較検討することにある。親権と子どもの福祉が対立する典型的な場合として子どもの虐待の場合を題材にした。いかなる場合に、どういう手続により父母もしくはその一方は親権制限を受け、さらにどんな法的取扱いがなされるべきかを明らかにした。 以上の点は親の側から見ると親としての権利制限という意味合いをもつものである。他方、保護される子どもの視点から問題を考えてみることが必要である。ドイツでは、子どもを保護すると、中長期的な処遇計画が立案される。そして、子どもは原則として個人家庭である里親養育に委ねられる。そのため、里親・里子・子どもの法的関係が明確にされていなくてはならない。この点について里親委託に関する法的規整について、ドイツ法における状況を明らかにした。 これらの法的取扱いの基本には、節目ごとの司法判断とアメリカ法でいうところのパーマネンシープランニングに基づいた時間を区切っての対応という特色をみてとることができる。これら対応は、子どもの時間感覚に即した取扱いをするとともに、親にとっては一見すると強力な権利制限を受けるように見えるが、結局は親が親であり続けるためにはどうしたらいいか、そのためにどのような支援が必要なのかを定めたものであるといえる。そして、親の権利制限も必要に応じたものになっており、それに対応する形で、後見制度、保護制度が設けられており、多くの場合少年局や民間団体がその任に当たっているのである。
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