本研究は、わが国において、行政による事前規制を中心とした消費者政策から、消費者利益擁護のための事業者による自主規制を市場を通して促進する政策の重視が求められている現在において、事業者団体による自主規制規範の制定やADRの一種であるビジネス・オンブズマン制度の面で、注目に値する実績をあげてきているいくつかの国を対象に調査・研究し、そこから得られる成果をもとに日本における21世紀型の消費者法モデルを析出することを目的としている。 平成13年度においては、前年度に収集したデータを下により掘り下げた検討を行うこととし、共同規制においてとりわけ顕著な成果を挙げているオーストラリアについて、集中した調査を行った。タンが、オーストラリア法改革委員会(6月)、消費者問題専門家会議(10月)、コンプライアンス専門家会議(11月)に出席して最新の情報を収集するとともに、いくつかの団体から、自主規制規範、ADR、コンプライアンスの関係についてヒアリングし、実態調査を行った。また、この分野での世界の第一者であるビル・ディー氏の来日を機会に、内閣府、経済産業省、帝塚山大学においてシンポジウムやスタッフセミナーを行い、意見を交換した。 また、松本は、ISOの消費者政策委員会総会(5月)に出席して、自主規制規範、企業の苦情処理、業界ADRについての国際規格化の動向を調査した。 オーストラリアの調査との対比でも、ISOの調査の対比でも、わが国では、事業者団体を軸にした共同規制の考え方が希薄であることが明らかになった。 また、本研究の成果は、松本及びタンがとりまとめに参加した、国民生活審議会消費者政策部会自主行動基準検討委員会の、事業者による自主行動基準の策定・公表とその遵守体制の整備を求める中間報告の内容の一定部分に反映している。
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