本研究は、わが国における消費者政策の第3の波として、消費者利益擁護のための事業者による自主的取り組みを市場を通して促進することが重視されている現在において、事業者団体による自主規制規範の制定やADRの一種であるビジネス・オンブズマン制度について海外の状況を調査・研究し、そこから得られる成果をもとに日本における21世紀型の消費者法政策モデルを析出することを目的としている。 比較の対象としては、もっとも成功していると言われているオーストラリアについて、数度の現地調査を含んで詳しく検討した。そして、オーストラリアと日本の類似スキームの比較を行い、日本におけるあるべき自主規制規範制度及びそのコンプライアンス・メカニズムの一環としてのビジネス・オンブズマン制度について、行政規制との関係、消費者や行政関係者の参加による共同規制の可能性を含めて、法政策的な検討を行った。オーストラリアモデルは事業者団体中心の取り組みに消費者団体、行政が協力するという枠組みであるが、他方、わが国では、個別企業による自主行動基準策定によるコンプライアンスメカニズムが近時強調されている。そこで、このような個別事業者によるコンプライアンスメカニズムと事業者団体主体のそれとの法政策面での比較検討、及び両者はどのような関係にあるべきかについての検討をも行った。また、ISOにおける消費者保護のためのいくつかの国際標準化作業についても情報収集を行った。 本研究の成果は、国際消費者法学会主催の第9回国際消費者法会議(2003年4月、アテネ)における基調講演として、"Managing risks through soft law techniques : Can they work for consumers?"と題して発表された。
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