期間内に「比較民事手続法学へのチチェローネ」、「EU規則との比較」の2論文を執筆した。前者においては、わが国の比較民事訴訟法学の成果を要約したうえで、比較民事訴訟法史、比較民事訴訟法学の独自性、民事訴訟法における法族論、異種法族間のマクロの訴訟法比較と外国訴訟法の移植、国際取引の発展と民事訴訟法のハーモナイゼイション、比較民事司法制度の一般理論といった比較民事訴訟法の基礎理論を検討した。その結果、比較民事訴訟法学は、訴訟実務の合理化;科学化、効率的でフェアな制度のlegal trans plantsの促進(すなわちalternativesの開発)、訴訟制度のヒューマナイゼイション(手続保障の憲法化・国際化、社会権としてのAccess to Justice)、法族論の柔軟化・訴訟法の近接化の促進、民事司法改革の基礎となる一般理念ないし訴訟哲学の提供といったさまざまな効用をもつことが解明された。以上の基礎理論をふまえた比較民事訴訟法学の体系化、国際民事訴訟法総論の確立が、今後の課題である。後者の研究は、マーストリヒト条約以後、国際民事手続法のハーモナイゼイションの動きが顕著であることをふまえ、EU規則を通じたヨーロッパ国際倒産法統合の現状を明らかにするとともに、わが国の新倒産法制との比較をこころみたものである。外国倒産手続の承認共助に一元化せずに、否認権などの局面では自動承認のシステムを活用すること、EU規則にならって倒産国際私法の分野の充実をはかることなどの解釈論的立法論的提言をこころみた。また、初めてEU倒産規則の全文を訳出したので、今後の立法資料としても重要な役割を果すと思われる。以上の2論文は校正段階で頁はまだ確定していない。
|