本年度は、当初の予定では、金融コングロマリットの具体的な規制の在り方を検討する予定であったが、海外においてこの分野の研究はやや停滞気味でもあり、このまま抽象的に規制のあり方を検討することは必ずしも得策ではないと考えられたこと、他方で、わが国では様々な形での保険コングロマリットの形成が現に生じており、これに伴う法律問題の検討が喫緊の課題となっていることから、本年度は後者の問題の検討に重点を置いて研究を行った。保険会社の企業結合や企業再編は、相互会社の株式会社化と株式交換・株式移転、保険会社同士の合併、保険契約の包括移転、保険会社の会社分割などによって行われうるが、これらの手段によって企業結合ないし企業再編が実行に移されるに際して、保険業法の様々な箇所で解釈上の疑義が存することが明らかになりつつある。これは、保険業法が、保険コングロマリットの形成が現在のように頻繁かつ多様な形で行われることを想定しなかったことによるものと思われる。そこで本年度は、現に企業結合・企業再編を経験した保険会社の法務担当者とのインタビューを通じて、実務上生じたまたは今後生じかねない種々の問題点を明らかにし、その解決のための保険業法の解釈・立法の在り方を検討した。それらの問題点のほとんどが従来検討されたことがない未知のものであって、その整理に時間を要したため、研究成果の公表には至らなかったが、来年度には、保険会社の企業結合ないし企業再編に関するまとまった研究を公表したいと考えている。
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