本研究は、現在ヨーロッパで進められている共通私法の形成を素材として、とくに契約法について、そうした共通法の形成を可能にする理論的基礎の分析を目的とした。このような観点からおこなった作業とその成果は、次のとおりである。 第1に、比較私法の方法論に関する議論を調査・検討した。具体的には、平成12年度に、比較私法方法論に関する伝統的な立場である機能主義的比較法の理論的可能性とその実際について検討した。平成13年度と14年度には、前年度の検討を踏まえて、個別的問題における機能主義的比較法の具体的展開について検討した。 第2に、ヨーロッパ契約法に関する現在の動向を調査・検討した。具体的には、国際的動産売買に関する国連条約、UNIDROIT国際商事契約原則、ヨーロッパ契約法原則、平成12年度に成立したドイツ改正債権法に焦点をあてて、平成12年度は特に契約不履行・瑕疵担保に関する問題を、平成13年度はヨーロッパ契約法の全体的動向がドイツ債務法の改正に向けた議論の過程と改正の結果にどのように作用しているかを、平成14年度は契約締結過程に関する問題を、それぞれ中心的に検討をした。 以上の検討の過程で得られた知見を応用した成果を活かして、研究発表欄掲載の論文等を発表した。 なお、本研究の代表者は、平成12年度は山本敬三(京都大学大学院法学研究科教授)であったが、山本が平成13年度に長期の在外研究を行うことになったため、平成13年度より佐久間毅に変更した。
|