今年度は、日本国内の裁判および裁判外の紛争処理制度における専門的知見の利用方法に関する調査・検討を行った。 具体的には、これまでに刊行された単行本・雑誌、個別紛争処理機関の発行するパンフレットなどの文献・資料を収集し、それに基づいて、日本国内の裁判および裁判外の紛争処理制度における専門的知見利用の実情を検討するほか、当該テーマに関わる各種の研究会に出席して、各種紛争処理機関の関係者から、それぞれの実情に関する情報を集めた。現在進行中である司法改革審議会での議論との関係で、とくに知的財産権関係、医療過誤、建築瑕疵紛争における専門的知見の利用に関しては、多くの情報を集めることができた。 集めた情報に関する本格的な分析は、来年度に予定する海外の制度の検討を待って総合的に行うべき今後の課題であるが、現時点での検討結果の一部は、とりわけ訴訟手続を中心として、後述する雑誌論文として公表した。その内容は以下の通りである。 1.専門的知見の利用方法としては、鑑定、裁判所調査官、専門家司法委員(専門委員)、専門家調停委員、専門家参審の各制度がありうるが、専門家によって知見が提供される手続が当事者に明らかになること(手続の透明性)が重要であることから、裁判所調査官制度の拡大や専門家参審の採用に対しては慎重であるべきである。 2.紛争当事者が各種の紛争処理手続のいずれを選択するかを決めるための情報として、各種手続の手続モデル(標準的なタイム・スケジュール)を作成することが必要である。
|