研究概要 |
1 平成13年6月商法改正の分析 平成13年6月のわが国商法の改正は,法定準備金に対する拘束の緩和を主内容とする。同改正は,わが国では従来想定されていなかった,非効率的に利用されている資産の株主への還元を目的とするものであるが,資本制度の空洞化に対する懸念も根強い。 2 国際会計基準への収斂の影響 資本市場の国際的統合の動きを前提として,国際会計基準への会計基準の収斂が進んでおり,わが国の会計基準設定も国際会計基準との整合性を強く求められる。しかし,同基準は英米型の資本市場に対する財務情報の提供に重きを置く会計思考を基盤としており,配当規制による債権者保護と情報提供機能との調和に腐心してきた日本やドイツの会計制度との乖離が存する。 3 資本制度の維持についての国際的比較 法制度としての資本制度は,アメリカではほぼ崩壊しているのに対し,ヨーロッパ諸国の法制では比較的維持されている。しかし,ヨーロッパ諸国においても,国際会計基準と自国会計基準との整合性の追求と,資本制度を通じての債権者保護との調和を課題とする法整備が進んでいる。その典型例であるドイツでは,国際会計基準への収斂を連結財務諸表に限定しながら,配当規制と課税利益算定の基礎となる個別財務諸表についてはドイツの主体性を維持しようとするが,その成否は不明である。
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