この研究は、バブル経済崩壊後変革を迫られている金融担保制度について、従来の担保制度の中核である抵当権制度の問題点、現実の担保実務の特徴と問題点を明らかにした上で、新たな担保制度の改正動向を提示し、最先端の金融取引力ある資産流動化制度を確実なものとすることを目的とするものである。 上記の目的を達成するために、以下のような検討を行った。まず第1章では、わが国の担保制度の中核である抵当権制度について、その全体を概観し、問題点を明らかにした。第2章では、銀行取引における担保制度の実状について、銀行取引約定書の担保条項とドイツ銀行普通取引約款との比較を通じて、わが国の特徴と課題を明らかにした。第3章では、最近の金融取引でも、抵当権の物上代位と相殺の競合に関する裁判例、将来債権・集合債権の譲渡性に関する裁判例、金融債券を受働債権とする相殺に関する裁判例を具体的に検討した。第4章では、現在担保・執行法制の改正が進行中であるが、以上の検討を踏まえて、改正要綱中間試案について、全股的に、個別的に一定の提案を行った。第5章では、非典型担保について、これまでの研究の延長として、非典型担保を体系的・理論的に位置づけるために、その検討方法をまとめたものである。第6章では、最近の最も先端的な金融取引制度として、現在の資産流動化制度を概観し、その意義と課題を検討した。この研究では、いずれの金融担保制度においても、市民から信頼される司法的紛争解決として、公平な法理論を基礎として構築すべきことを提示した。
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