(1)平成13年度は、近時多くの事例の蓄積のみられる米国消費者契約紛争事例を収集するとともに、それらを踏まえて現在米国において展開しつつある、あらたな契約法理の検討を行った。そこでは本研究の目的である、当事者の将来において継続する契約関係をも考慮にいれた「交渉促進規範」の構築のための各種の手がかりが得られた。 (2)同時に、平成12年度において収集された我が国の現実の紛争事例につき、さらに平成13年度においても実態調査を継続した。特に詳細に検討を行ったケースが、新築マンションの売買を巡る紛争事例である。実際に福岡市において生じているワンルームマンションの売買契約をめぐる紛争事例をとりあげ、当該ケースにおける売主・買主の両当事者に対するインタビュー、ヒアリング、また交渉の現場に立ち会い、具体的な紛争の実態の調査をおこなった。 (3)そこで得られたあらたな知見として、一見紛争の当事者同士であるように見える、売主と買主との間の紛争以外にも目を向けることの必要性が判明した。つまり、むしろ当事者を悩ませ、紛争解決の足かせとなっているものは、被害者たる買主が複数いる場合、その買主同士の利益の衝突に由来する買主同士の「もめごと」であることが判明した。 (4)以上の調査を経たのち、わが国における継続的契約紛争事例と、諸外国における事例との比較に着手した。特に、裁判外で当該事件がいかに処理されたか、つまりその具体的交渉プロセスのあり方、およびその交渉プロセスの規律に対して従来の契約法理論は十分な視点を提供してきたのか、という点を重視して検討を行った。
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