本研究は、各国における製造物責任法の概要と運用状況を明らかにすることによって、製造物責任理論の国際的な調和を図ることの必要性と可能性についての検討を行うことを目的とした3ヵ年計画である。そして、その初年度である平成12年度においては、米国における製造物責任訴訟と製造物責任理論の現状について現地調査を行うとともに、わが国における製造物責任紛争の実態を明らかにすることに重点をおいて研究を遂行するものとした。 その結果、米国においては、1997年にアメリカ法律協会が採択した「製造物責任に関する不法行為第三リステイトメント」によって製造物責任理論の総括がなされているものの、そこに示された考え方とは異なる立場をとる州が見出されたほか、クラス・アクションや懲罰賠償の濫用といった米国固有の法制度に起因する実務上の問題点が明らかとなった。 わが国における製造物責任紛争の実態については、1995年7月における製造物責任法の施行後についても、訴訟の増加傾向を見出すことができなかったが、その一方において、裁判外における和解による解決が多く図られていることが明らかになった。しかし、製造物責任法の立法化にあたって大きな役割を果たすことが期待された裁判外の紛争処理機関としてのPLセンターについては、必ずしも十分に機能しているものとは思われず、更なる分析を要するものと考えられる。 さらに、製造物責任理論の国際比較を行うにあたって、各国の研究者や実務家と意見交換を行い、議論する必要が生じたが、わが国における製造物責任理論や訴訟の現状を英文によってまとめた文献が乏しく、十分な成果を挙げることができないという問題が生じたため、本研究によって得られたわが国に関する製造物責任理論や訴訟などの現状については、英文によってこれをまとめるものとし、その作業を開始している。
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