1 研究の対象 平成12年度においては、「相手方による差別対価の独禁法上の規制に関する比較法的実証研究」をEC法を対象として研究を行った。EC条約においては、差別対価が競争制限を目的とし、または結果として引き起こす場合(81条)、もしくは、支配的地位の濫用である場合(82条)には、相手方による差別対価は禁止される。次のようなときに、この禁止は働く。 2 EC法において禁止される差別対価 (1)集団的差別対価 複数の事業者による共同の差別対価の設定は、81条に違反する。これは、同条1項d号が禁止行為の例示として挙げる差別行為に該当することとなるからである。直接の取引相手方ではない第三者に対して差別がなされる場合であっても、禁止される。 (2)集団的無差別対価 競争事業者が異なる状況に対して同じ対価を設定することを合意する場合は、81条1項に違反する。例えば、顧客毎に値引率を変更することを禁止し、違法な価格カルテルに相当する合意は禁止される。 (3)事業者団体による非会員に対する差別対価 事業者団体が価格協定等の違法な目的のために非会員に対して差別を行うことにより、反競争的効果を増大させ、それにより潜在競争を阻害する場合には、81条に違反する。82条に違反する可能性もある。 (4)支配的地位の濫用 同様の取引に対して異なる取引条件(価格を含む)を設定し、または、異なる取引に対して同様の取引条件を設定することは、82条違反となる場合がある。例えば、市場力をよりよく利用し、新規参入を阻止するために、同一の製品について大幅な差別対価を設定した行為が、欧州司法裁判所により82条違反とされた(United Brands事件)。
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