本年度は、第一に、ドイツ競争制限禁止法における企業結合(以下、合併)規制、とりわけ1998年の第6次改正以降における巨大合併(メガ・マージャー)に対する規制の研究を行った。さらに、合併規制以外の市場支配的地位の濫用規制および個別業法における一連の規制の内容と実務を研究した。第6次改正では、立法としては米国で判例法として発展したいわゆるエッセンシャル・ファシリティ理論がドイツにおいて世界的に見て初めて立法として導入された点で重要であり、それが電気通信、ガス・電力等のエネルギー市場での競争政策に具体的に適用されている点でもドイツの状況は比較法的に重要であることが判明した。その研究成果の一部は、「研究発表」に記載した「ドイツの競争政策」という形で公表した。 第二に、日本において金融を中心に産業再編成が起こっており、この産業再編成のかなりのものがメガ・マージャーの形をとっている。そこで、最近の金融を中心とした産業再編成が、金融分野および他の一般事業へいかなる競争政策上の影響を及ぼすかを分析・検討し、独禁法の規制のあり方をりっぽを含めて検討した。結論としては、産業再編成は競争政策としても基本的に好ましいが、地方市場における地方銀行の市場支配力の問題や都市銀行でも寡占的協調関係の促進されるおそれはなくはないこと、ネットワークへ非差別的アクセスをさせる必要が大きいこと、独禁法9条(持株会社規制)、9条の2(大規模会社の株式保有規制)、11条(金融会社の株式保有規制)の見直しが迫られ、9条は微調整で足りるが、9条の2は株式持合の解消により規制を維持する必要は乏しくなっていること、11条は米国的な銀商分離を維持するかどうか、および銀行による不公正取引や市場支配力の濫用が事前規制を必要とするレベルのものかを今後検証していかなければならない、との結論に達した。この成果は、「研究発表」に記載した「産業再編成と競争政策」という形で公表した。
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