本年度は、第一に、米国および欧州(EC)競争法における企業結合規制について、研究を行った。とくに、米国と欧州とで競争当局の規制および分析方法が対立し、米国では条件付きで認められながら、EC委員会が禁止をしたGE/Honeywell事件について米国の決定およびEC委員会の決定を分析し、規制の基準が似ているものの、異なる点があること、とくにEC委員会の決定の特徴を分析・検討した。その研究の一部は、「研究発表」に記載した「寡占市場間の合併と競争政策-GE/Honeywellの合併事件をめぐって」として公表した。この論文の後にも、欧米双方から論説や議論でており、これらのフォローを引き続き行っている。 第二に、巨大結合(メガマージャー)の規制を見る上で、いわゆる市場支配力概念(米国では、市場支配力、ECでは支配的地位)が極めて重要である。EC競争法では、電気通信分野のガイドラインができ、その中で電気通信等への規制において使われてきた「顕著な市場支配力」概念が欧州競争法における「支配的地位」に取って代わられた、つまり通信等の規制基準が競争法の基準に再定義されたことが重要であり、またEC競争法における「支配的地位」概念について、いわゆる集合的支配(collective dominance)概念の企業結合規制および支配的地位の濫用規制における新たな展開に注目した。EC競争法のこの2つ動向およびその含意について、分析・検討を行った。その成果は、「研究発表」に記載した「欧州競争法における『支配的地位』について」として公表予定である(すでに校正は終了している)。
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