研究概要 |
本研究期間においては、米国、欧州(EC)および日本に関する本テーマの総合的な研究を行ったが、その研究成果は調査報告書に掲載の通りである。 第一に、メガマージャー(巨大企業結合)規制の基本的な概念である、市場支配力、支配的地位の概念およびその分析方法、主張・立証方法について日米欧の比較研究を行った(報告書第一部)。日米欧の独禁法の規制を市場支配力の観点から総合的に比較分析し(第1・2章)、ドイツの法改正に着目して研究し(第3章)、さらに近時理論判例において急速に進展している支配的地位の規制を濫用規制、公益事業への規制に広げて研究し、その新たな知見と問題点を明らかにした(第4・5章)。これらは総務省の行う電気通信分野でのドミナント事業者規制や今後行う有効競争レビューに対して重要な問題点の示唆を行うものでもある。この研究は今後さらに進める。 第二に、メガマージャー規制の代表例として、GE/Honeywell事件の欧米の決定を詳細に比較し、支配的地位とSLCテストとの相違、効率の評価の仕方の差異、長期・短期の考え方の差異の背景にある考え方を分析した(第6章)。さらに、日本におけるメガマージャーとして、銀行、保険等の統合の競争上の評価を、市場集中規制および一般集中規制の両面から見て立法を含めた分析を行った(第7章)。 第三に、企業結合規制に関する具体的な立法提言を行った。研究代表者はすでに現在の合併ガイドラインの作成過程で重要な指摘を行ったが(第8章)、産業再生との関係で注目されている合併審査手続きや救済措置の設計に関する経済産業省および公正取引委員会の報告書にコメントを出している(第9章など)。さらに、平成14年に一般集中規制の法改正(独占禁止法9条0)2の廃止、9条、11条の改正)がなされたが、その立法の過程において、公正取引委員会の研究会において具体的な提言を行った(第10・11章)。これらは、第一,第二で行った比較法研究の成果がもとになっている。 第四に、企業結合規制以外の分野、さらに独禁法よりも広範な分野で、本研究を応用した。市場支配力の悪用の典型であるカルテル等に対して摘発を促進するための装置としてのリーニエンシー制度を米国法について調査研究した「米国反トラスト法における刑罰減免措置」(業績欄掲載)も本研究に関係する研究成果である。セーフガード措置の理論的整理と改革の提案をした「経済法からみたセーフガード」(業績欄掲載)は後者の意味での研究成果である。
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