今年度は、回復的司法モデルに関する国内および国外の主要文献を収集・分析し、わが国の量刑および行刑段階において、回復的司法モデルの適用が可能かどうか、可能であるとすればどのような形態であるべきかについて若干の検討を行った。特に量刑段階における問題に関しては、量刑事情として被害者関連的要素を考慮することが妥当か否かという点を含めて、いくつかの論稿を発表した。国内の文献を調査して明らかになったことは、現段階においては主として欧米での制度や学説などを紹介することに主眼をおいたものが多く、まだわが国での本モデルの具体的な適用可能性について論じたものは少ないという点であった。もっとも、昨年の法改正でわが国の刑事手続に被害者の意識陳述件が導入されたことは、たとえばイギリスにおけるVISに内在する問題点が、わが国においても顕在化するのではないかという危惧とともに、回復的司法モデルの日本独自の展開を跡づける必要性を生じさせたといえよう。また、行刑段階においても、少年に対する処遇プログラムの中に、被害者関連要素を取り入れる試みが実務レベルではすでに実施されていることが矯正関係者に対する聴き取りで明らかになった。現時点では、回復(関係修複)モデルと応報モデルを対立するものとして図式化することが、(議論の整理としては有効であるとしても)今後のわが国における議論にとって有益であるかどうか再検討する必要がある-と研究代表者および分担者は認識している。
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