欧米諸国で近年導入の著しい環境犯罪学ないし状況的犯罪予防の技法の一つとしてのCCTV(監視カメラ)の設置状況とそれに対する住民の対応について、主としてイギリスを中心に現地において調査を実施する一方、イギリス内務省調査統計課の担当研究員に対するインタビュー、さらには関係図書によるデータ収集等を行った。環境犯罪学ないし状況的犯罪予防に関する技法は、犯罪を未然に予防し、あるいは犯人検挙の可能性・迅速性を高めるが、その反面種々の問題性も抱えており、本研究ではその両面を検討することに主眼をおいた。 この結果、大都市(たとえばロンドン市、エディンバラ市)や中都市(たといばウォーバーハンプトン市)にはかなり数のCCTVが公私の領域に設置され、犯罪状況ないし道路交通状況を監視しており、なかには最新コンピュータ技術を駆使した顔面識別システム(facial recognition system)を導入し、犯罪前歴者・危険人物の所在を監視している。このようなシステムは、犯罪の事前防止ないし犯罪発生に対する迅速な対応を可能にする一方、一般市民の私生活に対する不当な介入の可能性もあり、イギリスでも議論が行われているが、一般にCCTVの設置は犯罪多発地帯に限定されており、その意味では市民に歓迎されているように思われた。しかし、一部の研究者・学者は「監視社会」に対する批判を強めている。今後、この種の機器がどの領域にどのような形で導入されていくのか、犯罪状況も勘案しながら、検討する必要がある。
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