80年代中期以後、東南アジア諸国の政治体制の多くは、それまでの権威的支配から、民主制に転換した。この体制転換の過程で、政策決定のプロセスがどう変わったか、検討することがこの研究の目的であった。 具体的に、行政権と立法権の相互関係について、従来の「行政優位」の「開発体制」がどれほど変わったのか、行政・立法関係における転換の海に焦点を絞り、予算策定過程の国際比較を行った。 この過程で、フィリピンではエストラーダ政権の崩壊が、またタイではタクシン新政権の発足が見られた。そのどちらの事例でも、民主制に移行した後も立法権の自立が阻まれたために、議会の不満が生まれ、立法と行政の対立のために政策決定が拘束されるというパターンを見ることができる。 予算策定に注目した場合、行政優位という性格は、三国のどれにも当てはまり、しかも民主化前・民主化前、また立法・行政危機の前後によって違いが見られない。つまり、民主化後における行政権力の優位は行政と立法との間に危機を招くが、その対立が具体的な予算配分などに与えた影響は見ることができないのである。 この対立は生むが政策は変わらない。この状況が短期的な現象なのか、それとも民主化後の体制に共通した制度的特徴なのか、それを解明することが次の課題として残された
|