本研究は、地方行政も例外ではない。国の行財政同様、地方自治体の行財政も歳入の減少と公債費の増加による未曾有の財政赤字に苦しみ、「破産」という極限の事態まで予想されている中で、国民生活及び経済の中で大きな比重を占める自治体の行財政運営をいかに効率化・合理化し、少子高齢化をはじめとする行政需要の増大に対応していくかという課題を達成するための改革の指針を、国際的比較研究の中から抽出し呈示することを目的とした。その手法として、NPM (New Public Management新公共管理論)と呼ばれる、市場や競争の原理を取り入れた理論モデルに従って改革を実践し成果をあげている諸外国(アメリカ、イギリスおよびニュージーランド)と日本の事例を主たる研究対象として取り上げ、比較研究を行った。 海外の事例研究は、ニュージーランド、アメリカ合衆国およぴ連合王国で行った。ニュージーランド訪問は本研究が開始する以前に、文部省在外研究め機会を利用し行ったが、その際得た知見と人脈を利用し、随時研究に必要な資料やデータを入手することができた。とくに、ニュージーランドでニュー・パブリック・マネジメント的手法を用いた自治体改革としてもっとも成功したと言われるハット市につき、当時の事務総長(CEO)であったロジャー・カーニュウエル氏の協力を得て、詳細な事例研究を行うことができた。研究報告書でニュージーランドの自治体改革についての記述が大きな割合を占めるのはそうした理由による。 本研究が始まってから、わが国でも、ニュー・パブリック・マネジメント的改革に着手する自治体が増加してきた。その代表例として、福岡市の『DNA運動』につき、検討を行っている。なお、その成果の一部は、2001年にアテネで開催された国際行政学会で、共著者の宮本が報告している。なお、研究代表者は、愛知県瀬戸市の行政経営委員会に参加し、NPM的自治体改革を進めながらも、それで得た知見を同時に実際の改革に適用するという機会に恵まれた。この改革は進行中のものでもあり、研究報告書には掲載できなかったが、しかし、研究と実践を融合させた貴重な成果は近い将来公けにする予定である。
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