本研究は、発展途上国に対する開発援助政策をめぐる理論的・政策的課題に応えるために、「相互依存モデル」の枠組の下で、日本の政府開発援助(1975-1995)について、援助供与の効果を、(1)援助は供与国の政治的・経済的な利益を増進するのか、(2)供与された援助は途上国の経済成長と分配の平等に貢献するのか、という2点に分けて検討することを目的としている。 昨年度は、日本の政府開発援助(1975-1995)を実証分析の対象として検討するための資料収集を行ない、収集したデータの分析に取り掛かったが、これを2000年度まで延長できないか、現在検討中である。また、秋に予定していた視察旅行は、米国における同時多発テロの関係で3月に延期となり、マレーシア、タイ、フィリピン、シンガポールを訪問し、プロジェクト評価の予備調査と現地研究者からのヒアリングを行なった。ミクロ・レベルでの評価とマクロ・レベルでの評価とをどう有機的に結びつけるのか、理論的困難もあり、いまのところ新しい知見はない。 本年度は、供与国の政策目的を制御変数として取り入れた、援助効果に関するモデルを作成し、援助を規定する要因と援助の効果との両側面に配慮した総合的・政策論的な援助理論を展開する計画であったが、前年度からの研究計画の遅れのため十分な議論の展開には至っていない。実証分析の結果とプロジェクト評価やインタビューから得られた知見に理論的考察を加えて、論文のドラフトを作成し、これを米国やアジアの研究者の前で発表、意見交換することを予定していたが、これも2月・3月にずれ込んでしまった。したがって、そこから得られるであろう知見や批判を受けて、最終結果と収集した資料とを紀要論文の形で発表するのは平成15年度の予定である。
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