本研究は、戦後国土開発政策を地方政治・行政の視点から考察することを通じて、戦後国土開発政策を再検討し、国土政策の多義的性質や時代ごとの変化を解明することを目的と設定した。そして、第一に、国土政策を担当する行政組織の企画調整機能の変容、第二に、国土政策において国-都道府県-市町村という政府間関係がどのように規定され、変化してきたのかを明らかにすることを狙いとしている。 本研究は、戦後国土政策における政府間関係を歴史的に検証するという趣旨から、1次資料の収集と分析、および関係者へのヒヤリングという実証研究を中心とした手法によって作業を進めた。検討事例の対象として選定したのは、80年代以降における北海道開発政策・90年代以降の沖縄振興開発政策、戦後東北開発政策である。 本研究における成果は以下の3点にまとめることができる。第一に、国土開発概念の多義性を明らかにした。第二に、特定地域を対象とする企画調整官庁の役割とその限界を明らかにした。第三に、国土開発政策過程における政府間関係は、固定的、静態的なものではなく、社会経済的環境や中央地方の政治的環境の影響を受けて変化している。さらに、国土政策作成・実施過程において市町村が都道府県を迂回することによって中央政府のアクターと結合するなど、地方政治家、行政官による多様な活動形態を明らかにするとともに、垂直的政府間構造からはとらえられない政策ネットワーク形成が明らかになった。
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