研究期間のかなりの部分はちょうどアメリカの大統領選挙の時期と重なっていたため、とくに共和党の大統領選挙公認候補決定過程(予備選挙および党員集会、そして全国党大会)を詳しく分析した。同時に、共和党の上院・下院議員の公認候補決定過程についても、とくに現職がいない選挙区を中心に分析した。また、共和党寄りのさまざまの利益団体の動向についても詳しく分析した。このなかには、全米独立企業連盟、全米ライフル協会、クリスチャン・コアリション、全米生命の権利委員会、全米労働権委員会、アメリカを憂慮する女性の会、全米税制改革協議会などが含まれる。 これらの実証的な分析と並行して、理論的な検討も進めた。その焦点は、アメリカにおける政党変容メカニズムに関しての分析である。これには予備選挙の機能、社会運動あるいは政治運動と政党の関係、政治献金の役割などについての検討が含まれる。こんにち、利益団体はその政治的態度によって、(1)純粋に争点指向の団体、(2)現職指向の団体、そして(3)明確にリベラルあるいは保守のイデオロギーをもつ団体の3種類に分類することが可能である。ここ20〜30年間に政党そのものがイデオロギー的純度を増してきたが、それに呼応して、利益団体も民主党系あるいは共和党系に旗幟を鮮明にしてきた。政党とこの種の利益団体の関係は、近年かなりの程度固定的になったと想定される。 さらに本研究では、共和党を支持するさまざまの団体の連合(coalition)のあり方についても分析を進めた。こんにちの共和党支持団体の特徴は、かなり固い相互の支援・協力・同盟関係を結んでいることにあると推定される。本年度の研究で以上の仮説は概ね妥当であるとの感触をえている。
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