米国共和党の保守化について、今年度はその支持団体の連合について、より踏み込んで分析した。一つは環境保護問題や政治資金規正問題との関係において、共和党系団体が正面から民主党系団体と対立関係にある事例が少なくないことに着目して、いくつかのケース・スダディを行った。また、主として国内政治問題を主軸にして形成された現在の共和党保守派連合の存在が、きわめて重要な外交政策的含意をもつことも解明した。それは党内における中道穏健派・国際派の衰退をもたらした。また減税団体や保守派イデオロギー団体、中小企業団体などが中核になっている保守派連合には、外交タカ派もその一翼に加わっており、内政での保守派の勢力伸長に並行して、外交での保守派ないしタカ派の影響力も鋭く増している。本年度の研究ではこの点について大きな成果をあげることができた。 また、連合戦略とは異なり、より純粋にイデオロギー的戦略を採用している団体にも本年度は着目した。たとえば「経済成長クラブ」は、共和党の予備選挙に参加して経済保守寄りの候補のみを支援する。穏健派の現職に挑戦することすらある。このような勢力も実は急速に勢力を増しており、こんにちの共和党の保守化を分析する際に見逃すことが許されない要因である。 本研究によってG.W.ブッシュ政権が内政では「経済成長クラブ」や宗教保守派によって強く右寄りの磁力を受けながら、小さな政府を目指す利益連合によって支えられ、また外交においては「力による平和」を提唱するタカ派集団によって支持されている様相が十分解明されたと思われる。
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