本申請研究の目的は2つである。まず第一に、分離主義運動と大量の難民が存在する中で、コーカサス地域3か国(アルメニア、アゼルバイジャン、グルジア)における政治変化過程を実証的に比較分析することである。第二に、本申請研究の理論的視角は、現在、欧米の比較政治学界で議論されている第三世界の民主化論で、歴史的背景と市民社会との関連の中での国家制度の発展をとらえる新制度主義(neoinstitutionalism)の議論を分析することである。こうした理論的枠組みに立ち、本申請研究は、国家と市民社会の関係に焦点を当て、両者がどのような関係にある時に、民主化は進展する傾向があるかという点を検討したている。 平成12年度には、計画の通り、社会調査の方法論を論じた関連図書とコーカサス地域の政治、経済、社会及び文化状況を示す基礎的資料を購入した。またデータそのものの入手と同時に、データ解析のための代表的なソフト(SPSSとその付属ソフト)の購入を行った。現段階での研究から言いうることは、コーカサス地域における政治変化を分析する際には、エスニシティと政治体制の変化の関連を検討することが不可欠である。また既存の研究では、この関連を詳細に分析した研究が少なく、新制度主義は、この点を体系的に論ずるのに有益な視点を提示しているといえよう。
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