ドイツ・シュレーダー連立政権は、2002年9月の連邦議会選挙において辛うじて再選された。最大の課題とされてきた失業者数の大幅な削減を果たせなかったことが、辛勝の理由である。しかし、有権者は野党ではなく、赤と緑の連立に「第二チャンス」を与えた。本政権の再選は、直前のスウェーデンにおける中道左派政権の継続と合わせて、ヨーロッパレベルにおける中道左派政権の退潮に歯止めをかけたものと位置づけられる。 本年度は、第一に、第1期シュレーダー政権の政権政策のレビューを行った。特に、経済・雇用政策の現状、赤と緑の連立による政策革新の領域である「多文化社会」をめぐる政策、脱原発と新しいエネルギー政策、エコ税制改革、「ジェンダーの主流化」への動きなどについて調査と分析を行った。さらに、シュレーダー政権によって「新しい政治スタイル」として合意形成の手法が重視されているので、これについて資料収集と分析を行った。 第二に、連邦議会選挙の時期に、ベルリン、ボン、ハイデルベルクにおいて選挙戦及びシュレーダー政権の政権政策についてインタビュー調査を行った。さらに、選挙キャンペーンと選挙結果の分析を行い、新しい連立協定を中心に第2期シュレーダー連立政権の課題を整理した。雇用政策については、失業者数を半減させるというハーツ委員会の報告書とその立法化について資料収集を行った。環境政策に関連しては、総合計画でもある「維持可能性」の戦略の形成ブロセスに関する資料を収集し、分析を行った。
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