来るべき知識社会的資本主義はポスト社会主義でもあり、ポスト社会主義とは、社会主義崩壊の影響があるとともに社会主義崩壊の教訓を生かすべき社会でもあって、そうしたポスト社会主義という特性が、21世紀に、つまり生産力のあり様が産業社会から知識社会に大きく変わる中で、どのような含意を持つかが問題である。そうした将来的含意を探る目をもって20世紀社会主義経済体制の経緯と崩壊原因を再考すべきだと考えている。 20世紀社会主義経済体制を資本主義に必然的に伴う社会病理に対する実験的ではあるが19世紀的であった療法とみなす立場から、その体制の存在の経緯と崩壊原因を現時点のレベルにおいて再考することが本研究の目的である。 本年度は、(1)昨年度に引き続き本研究テーマに関係する文献資料の全般的、系統的な購入・収集と整理、検討をおこない、(2)先行研究についてのサーベイと1990年代に提起された諸説の検討を継続するとともに、(3)関連する学会や研究会への出席により意見交換と情報収集をおこない、また国内主要研究機関・図書館等において文献・資料を調査した。 あわせて、社会主義体制崩壊の根本原因探求の一環として、21世紀社会主義体制をリードしたマルクス主義の根本思想である唯物史観(史的唯物論)について、近年注目されたいくつかの歴史観(歴史解釈と歴史展望の理論)の到達点から批判的検討を加えた。
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