研究概要 |
バブル経済崩壊後の不況と折からの金融システムの不安定性に増幅されたマクロ経済環境の悪化に直面して,企業の人事制度を能力主義・成果主義の色彩の濃いものに再編しようとする動きが一段と加速してきた.こうした状況の下で,本研究の目的は,以下の3つの方法を異にする分析を重層的に実施することである.(1)聞き取り調査の手法を用いて,個別企業の人事担当者やライン管理職を対象に,人事制度の改革状況やその運用状況を厳密に聞き取る.(2)アンケート調査の方法により,人事制度の改革状況やその運用状況に関する大量観察データを収集し,個別事例でみられた事象の代表性を確認する.(3)アンケート調査のデータと(目的外使用申請予定の)政府統計のミクロ・データとのマッチング(複数データセットの接合)分析の方法により,企業内人事制度改革が大規模なサンプルを有する政府統計のレベルでどのような変化をもたらしているのかを確認する. 本年度は,昨年度実施した先行研究の包括的展望と,人事制度改革を実際に行っている企業の人事担当責任者を対象とするin-depthな聞き取り調査を前提に,人事制度改革を実施した3企業の従業員意識調査を実施した.改革の方向は,三者三様であり,職能資格制度の運用の厳格化を行ったA社,役割等級制度を導入したB社,職務給制度へ転換したC社に分岐している.現在データ入力作業が終わった段階であり,まだ内容的なことは言えないが,制度改定に対して従業員側がどう反応しているか,制度改定の内容が反応の違いを生み出すかなどの問題を厳密に分析することにしたい.
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