研究課題
基盤研究(C)
バブル経済崩壊後の長期不況の中で、日本企業は企業組織と人事制度の再編に取り組んできた。その際のキーワードは成果主義である。しかし、従来、成果主義的賃金制度それ自体の分析は数多くなされてきたけれども、人事制度改革が雇用システム全体のいかなる変化を伴ってきたか、とりわけ企業の現実の報酬構造に対してどのような影響を及ぼしたかの研究は数少ない。こうした状況を踏まえ、この研究では、次の3つの課題を設定した。1.聞き取り調査の手法を用い、企業組織の再編や人事制度改革の実態を把握する。2.アンケート調査の手法により、企業組織の再編や人事制度改革の全般的状況を明らかにする。3.個別企業に焦点を定め、その人事データにより人事制度改革の前後での報酬構造の変化を明らかにする。なお、本研究の当初では、上記3に代えて、政府統計のミクロデータ分析を行う予定であったが、人事データ利用の機会に恵まれたことから、研究方針を調整した。これにより当初の計画で意図した、人事制度改革が雇用システムに及ぼす影響をより具体的なレベルで把握できたと確信する。以上の研究の結果、以下のような点が明らかとなった。1.聞き取り調査の結果からは、電機産業企業という対象の限定はあるが、各企業とも、製造からソリューションを含むIT関連サービスへの事業領域のシフトがみられた。また、デジタル化やネットワーク化に伴う製品の融合化に組織の融合化が随伴するという現象もみられた。こうした企業組織面の変化に対応して、大規模な職種別従業員の過不足状況が発生し、その雇用調整問題に各企業とも直面するとともに、人事制度をより成果主義的なものに変更する動きが見られた。2.機械系産業の企業を対象とするアンケート調査でも、そうした聞き取りの結果がほぼ裏書きされた。3.そこで、個別企業に焦点を定め、人事制度改革の前後で現実の賃金構造にいかなる変化が発生したのかを人事データを用いて分析した。その結果、各社ともに年齢や勤続の効果が弱まり、査定の効果が強まっていることが確認された。
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