今年度は、(1)金融CGEモデル作成方法、(2)OECD諸国金融CGEモデル試行作成、(3)所得階層別家計勘定を含むロシア社会会計表(SAM)作成を計画した。 (1)と(2)に関して、CGEモデルに資金循環表をビルトインする方法を試行したが、データの制約、方法論上の問題のため、この方法による金融CGEモデル作成は困難であった。そこで、中央銀行と重要商業銀行のみを詳細にモデル化し、その他の金融部門を「残余」とする方法に方針を変えた。これは、世界銀行RSMS-Xモデルに金融部門をビルトインする方法にならったもので、ロシアの現状に適する。現在このラインで「ロシア貯蓄銀行」を分析しているため、(1)、(2)については目標とする成果は得られなかった。しかし、中間生産物として「社会会計表の乗数分析手法」「1990年英国SAMの乗数分析」の2本の論文を発表し、2000年12月にはSAM作成に関連する計算技法についてタシケントでおこなわれたJICAおよびウズベキスタン・マクロ経済統計省主催シンポジウムで報告をおこなった。 (3)については、ロシアのミクロ・データの分析を進めている。最初の成果は「ロシアにおける家計の貯蓄行動」として比較経済体制学会会報に発表した。しかし、データが膨大なため、分析は8年分のデータのうち1年分しか終了しておらず、遅れている。 現在実行中の作業は、(1資本蓄積勘定金融表、I-O表、部門別国民経済計算をビルトインした1995年ロシア金融SAMの作成、(2)ロシア貯蓄銀行年次報告の分析、(3)ミクロデータによる家計貯蓄分析である。次年度は、(1)で作成したSAMの金融部門部分を(2)にもとづく銀行部門モデルで置換え、(1)の家計部分を(3)によって拡張し、現時点で最大限詳細なロシア金融SAM・CGEモデル作成を目標とする。
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