研究概要 |
過去、労働者管理企業および国際労働移動の理輪的分析について研究を行ってきており,その研究蓄積をもとに中国の経済発展について、中国の経済的特徴を考慮したモデルを構築して、分析したものである。 中国の国内労働移動は西部地域から東部地域への大量の労働移動と農村地域から周辺の郷鎮企業への労働移動が存在する。前者は大都市におけるインフォーマルセクターの形成によって、ハリス・トダロ的条件を、後者は郷鎮企業の近代部門としての役割から、ルイス的条件をみたしていることを論証した。そして、郷鎮企業についてのコーポレトガバナンスに着目して、株式の状況や企業経営を概観することにより、郷鎮企業が労働者管理型の企業形態の特徴を備えていることを論じた。こうした点を踏まえて、経済発展におけるルイスモデルにおいて、その近代部門が労働者管理型企業であるとして、経済発展のための政策について分析を行った。 いくつかの結果を得たが、通常のルイスモデルで主張される近代部門の育成政策は無効であり、ハリストダロモデルが主張する伝統部門の技術向上が有効であることが示された。さらに、この分析からのインプリケーションとして、郷鎮企業が資本主義的な利潤最大化行動をめざすような政策、例えば株式市場や資本市場の健全な育成が重要であることが引き出された。 この研究の今後の発展として、ハリス・トダロ的側面と国営企業の存在を考慮した場合の分析を行うことで、分析の精緻化をはかることが考えられる。
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