メインバンクは、日本の企業金融において主導的役割を果たしてきたとの認識が一般的である。また、メインバンク・システムは、日本型企業システムの基本的構成要素であり、他のシステム、労働、企業間取引等の機能とも密接な関係を持つとされている。 既存の研究によれば、メインバンクは、企業のエイジェンシー・コストの削減等に一定の役割を果たしてきた。 本研究においては、メインバンクの機能の時系列的な変化をとらえること、特に、銀行以外の資金調達手段としての社債市場へのアクセスが持つ意義に着目して分析した。 その結果、メインバンクの機能は必ずしもこれまでの研究が示唆しているほど明確には確認できないこと、社債市場へのアクセスの存在が一定の意味を持ち投資需要に関する内部資金制約を緩和すること等が確認できた。また、興味深い事実として、最近時点のように経済状況が良くない場合の方が、メインバンクの存在により企業が内部資金制約の緩和を実現できることが判った。ただし、この場合において、メインバンクを有する企業の方がそうでない群に比べて経営状態が良くない等のサンプル・セレクション・バイアスが生じている可能性があり、この点を考慮した分析も行った。 いずれにせよ、今後は日本の銀行は、優良大企業対する貸付に依存することは難しく、中小企業向けを中心にした貸付の比重を増やす必要があると考えられ、真の意味での審査能力を身に付けることが必要となっている。
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