研究概要 |
本年度は再生可能資源の持続可能性に特化した研究を進めた。枯渇性資源と異なり、自然の治癒力や生物活動を通じて資源量が増大したり復元したりする場合には、丁度その復元量だけを毎期毎期消費していけば、資源の量は一定に保たれ、永遠に資源を利用し続けることができる。問題は、その一定の資源量をどの水準に固定すればよいかである。資源量が多くなり過ぎると、自然治癒力や生物活動の再生力が落ち、資源量を一定に保てるような各期の資源消費量は少なくなる。逆に、ストックとしての資源量が少な過ぎる場合には、何らかの不測の事態がおこったときに資源の消費可能性に問題が生じる危険性が高まる。一般的に、再生可能性資源の単位時間あたりの再生量(再生率)は、各時点の資源ストックの凹関数になると考えられている。しからば、その関数の最高点を維持するのが最適であると考えられるかも知れない。しかし、当該資源経済の社会的効用が、フローとしての資源採掘量のみならず、各時点での資源ストック水準そのものにも依存するなら、再生率関数の最高点を維持することが最適ではなく、それより右、すなわち、凹関数の最高点をもたらすストックより多くの資源量を選択すべきであることがすでに知られていた(Beltratti, A., G.Chichilnisky and G.M.Heal, 1993, 1995, 1998)。これに対し、われわれは持続可能な最適点が、同じ凹型の再生率関数の最高点より左になる可能性を示した。当該資源経済の目的が、資源採掘からあがる利潤を最大にすることにあるならば、(1)最適な定常資源ストックは、資源の最大再生率に対応するストックより大きくも小さくもなり得るが、(2)資源ストックが採掘費に影響を与えなければ、必ず小さくなり、(3)さらに、経済の時間割引率がゼロであれば、最大再生率に対応するストックを維持することが最適になる、という分析結果を得た。
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