本研究は、枯渇性資源あるいは再生可能資源を保有する経済が、世代を通じて一定の消費水準を堅持しつづけることができるかどうか、できるとすればどのようなルールにしたがって、資源を採掘してゆけばよいかを問ってきた。研究方法は、資源の経済分析において1970年代から用いられてきた最適制御理論を利用した理論分析である。ただし、既存研究とは異なり、Optimal Stochastic Controlを採用した不確実性下の分析である。理論モデルの構築にあたり、資源経済を幅広い角度から検証し、不確実性の導入には当該資源の販売価格を確率変数とすることが最も現実味のある取り扱い方であると確信するに至った。よって、本研究では資源価格をブラウン運動にしたがう確率過程で表している。他の研究に比べて、価格が将来に向かって時間とともにより不確実になっていくことを的確に表現することが可能となっている。2年間の研究により、以下の知見を得た。 (1)平成12年度の研究により、資源価格の分散が時間の増加関数であれば、資源が枯渇性であるか再生可能資源であるかにかかわらず、消費の持続可能性に関するHartwickルールは、価格変動によるキャピタル・ゲイン(あるいはロス)の過去からの累積分を加味したルールに修正されなければならないことがわかった。 (2)平成13年度の研究により、Hartwickルールを離れて資源採掘からあがる利潤の割引現在価値を最大化するならば、再生可能資源については、定常状態における最適資源ストックは資源の最大再生率に対応する水準より大きくも小さくもなり得るが、資源ストックが採掘費用に影響を及ぼさなければ、前者が後者より小さくなり、時間に対する割引率がゼロであれば、両者が一致することがわかった。
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