研究概要 |
地方自治体が地域連携により公共施設を整備する際に,どのような地域連携が望ましいかを協力ゲームの理論を応用して分析した。これまでダム建設など大型プロジェクトに適用されてきた協力ゲームによる費用分担問題の解法を二つの方向で拡張した。第一は,費用のみに着目していた従来の理論に,便益面の評価を付け加え,「便益付き費用分担問題」を定式化したことである。この拡張により,施設利用に伴う便益を明示的に考慮することが可能になり,高齢者福祉施設等を建設する場合の費用分担を評価することが可能になった.第二は,環境面への影響を考慮に入れるため,外部性の概念を導入し,「外部性のある場合の費用分担問題」を定式化したことである。この拡張により環境への外部経済効果を明示的に評価することが可能になり,汚水処理場等を建設する場合の費用分担を評価することが可能になった。 地方自治体が地域連携により比較的小規模の公共施設を整備する場合には,個別の自治体には地域連携に参加せず,単独で公共施設を建設するという選択肢がある.したがって地方自治体の地域連携を評価するためには,費用分担に先立って自治体間の連携の形態を決定する必要が出てくる。この問題を最適提携構造の決定問題として定式化し,それを決定するための方法として,全提携値総和最大化法と最大コア指標最小化法の二つを提案した。 ゲーム理論の面の成果としては,協力ゲームの評価を一つの実数によって与える新たな評価法として「コア指標」の概念を導入し,それを求めるための「コア指標公式」を導出したことがある。これによって,これまで評価することができなかったコアの存在しない場合の協力ゲームについての評価法が確立した。
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