1)エイジング関係の文献を蒐集し、今日のエイジング研究が何を課題にし、それをどのように分析しているかについてサーヴェイを行った。特にイギリス・アメリカにおけるエイジング研究約100タイトルの文献を蒐集し、それを主題別に分類し、各タイトルについての解題つき文献目録を作成した。 2)イギリスの1908年老齢年金法の成立とそれ以後の社会政策の歴史を再検討し、老齢年金をめぐる高齢者像がどのように変化したかを明らかにした。特に、19世紀末、貧困対策としてのチェンバレンやブースにはじまる老齢年金の提案から1930年代の失業対策としての老齢年金の充実への道のりの中で「保護されるもの」あるいは「国家にとって厄介もの」としての高齢者像が作り出されたことを明らかにした。 3)上の老齢年金が定年退職制度とセットになって成立し、それが福祉国家システムの充実としてこれまでとらえられてきた。しかしこのこと自体が、高齢者から労働の権利を奪うという高齢者差別(エイジズム)を生み出す。このエイジズムに福祉国家の経済学はどのように寄与したかを明らかにする手がかりをえた。フェミニズムからの福祉国家批判とむすびつけてこの問題を検討する必要があることが明らかになった。 4)心身医学や保健学、社会福祉の専門家からのヒアリングを行い、高齢者の健康や生きがいがどのように確保され、確立されるべきかについて、「高齢者の生活時間調査」(すでに前年度からおこなっている)をとおして検討した。「睡眠」と「労働」と「余暇」の時間配分を、「元気な」高齢者はどのようにしているかが明らかになった。高齢者も女性と同じように、「労働」をつうじて社会とかかわりをもち自立して生きることが重要である。経済学はこの問題をどのように解決しようとしているか、また解決してきたかを明らかにすることが来年度の課題である。
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