先進国の社会科学とメディア 3年の間に、社会科学の研究と教育の両方にわたって、コンピュータやネットワークの利用可能性が急激に拡がった。研究・教育の両面に関係するが、国内外の公的機関(国際経済学協会を含む)が最新情報をウェブに公表するようになり、オンライン・データの蓄積がすすんだ。経済学史研究についても、文献・資料のオンライン化が進んで研究スタイルを変えている。授業において、マルチメディア教育実験室や遠隔授業用ツールを利用し、教材はローカルサーバに置いて著作権の問題をクリアした。社会科学教育では『賢明に誘導されたピア・レビュー』が有効であることを発見した。研究成果は日本語で発表した。日本語で発表した成果報告集には、ネットワークを利用した授業の際に利用した文書(ホームページ掲載)や現代社会科学論のピア・レビューの様子を収録した。 日本の政治経済学(国際比較をもとに) 経済学者の政府の中における役割に焦点をおいて国際比較研究を実施し、日本語論文を発表し、英語論文を国際会議で発表した。欧米や韓国では経済学者たちが政府の中で仕事をしていたが、日本で経済学者が目立ち始めたのは、第2次大戦終了直後の経済再建期を除けば、1980年代の国鉄改革や1990年代半ばの経済改革論議(規制緩和等)以降のことであった。現在ではフルタイムで政策現場に入り込む経済専門職も登場している。1980年代から1990年代にかけて、日本の経済学者などの経済専門職たちが経済改革の審議過程や政策形成過程に、それ以前に比べてより直接的な形で関与するようになった経緯を分析し、1985-6年が、日本の経済学者(経済政策分野)にとって転換点となり、研究姿勢が変わったことを発見した。
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