本研究は、現代における貨幣・金融の組織性とその不安定性の理論と現実に迫る考察の枠組みを体系的に再整備しようとするものであり、18世紀以来の主要な学説の意義に広く再考察を加え、現代のケインズ学派やポスト・ケインズ学派の貢献と限界も大きな学説史的文脈のなかに位置づけて取り扱うとともに、現代資本主義に特徴的な貨幣・金融組織の発展とその不安定な動態の論理にも、資本主義経済の史的発展の推移を背景に再考をすすめる課題をたてていた。その作業の推進のために、欧米マルクス学派との交流を図り、ロンドン大学のC.Lapavitsas博士を事実上の共同研究者としてその協力を得て、本計画は、平成12年度と平成13年度の2年間に実施、推進された。本年度はその第2年度にあたり、前年度の研究の進展をうけて、研究計画の後半部分を推進した。とくに現代の貨幣・金融の組織性の体系的な変化・再編とその不安定性問題の理論と現実に検討をすすめるとともに、両年度にわたる研究成果の主要部分をLapavitsas博士との共著『貨幣・金融の政治経済学』(岩波書店)にとりまとめ、出版する作業もすすめ、2002年1月にはこの共著を上梓することができた。この間、2001年7月には1週間イギリスを訪ね、Lapavitsas博士と直接研究の打ち合わせをすすめ、あわせてロンドン大学でのセミナーおよび非正統派経済学会年次大会で、報告、討論を行い、多くの示唆を得た。また本研究に密接に関連して、資本主義の歴史的逆流としての新自由主義についての批判的考察、および最近の日本における金融システムの金融危機やそれへの対応、対策の意義にも考察をすすめ、最終報告書にはふくめないが、以下項目11に記すような3点の英文の論稿も公刊した。本研究の推進に直接・間接協力してもらえる国内の専門的研究者ほぼ16名との月1回程度の研究会も國學院大學において継続し、ほぼ予定どおり本年度の研究を遂行しえたと考えている。
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