研究の初年度として、主として協力の形成に関する基本的な理論モデルの構築を行った。研究代表者と研究分担者の間で定期的に議論を続け、ゲーム理論に基づくグループ形成モデルを情報構造の多様性に応じていくつか提示し、そのモデルに対し理論的研究をおこなった。これらの研究成果をもとに年度の後半に、経済実験を行う計画を立てていたが、実験に必要なネットワークを利用したコンピュータプログラムの作成とその準備、打ち合わせに手間取り、プログラムが完成したのが年度末となってしまったため、実際の被験者を利用した実験の実施は来年度に繰り越されることとなった。ネットワークを利用した実験の場合、コンピュータプログラムの設計、レイアウト、動作確認、細かい仕様の調整に時間がかかり、従来の実験票や実験用紙を使った場合よりも格段に準備時間が必要であることを痛感した。なお、このようなネットワークを利用した実験研究の参考のため、充実した実験施設を保有している北海道大学文学部山岸研究室を訪問した。この訪問は実験を計画する上で非常に参考になった。さらに、その際、実験プログラム作成者と綿密な打ち合わせを行った。 また、これとは別に、理論モデルや実験計画の検討に際し、東京工業大学武藤滋夫教授や埼玉大学内木哲也助教授の研究室を訪問し、長時間にわたる議論により両者から有益な助言、示唆を頂いた。さらに、早稲田大学にゲーム理論や実験経済学の研究に関連する研究者を招いてセミナーを多数開催し議論を行った。セミナーの報告者としては、一橋大学蓼沼宏一教授、信州大学西村直子助教授、慶応大学グレーバー香子助教授、小樽商科大学篠塚友一助教授、大阪府立大学丸田利昌助教授などが挙げられる。第4回実験経済学コンファレンスにも参加し、全国の研究者と最新の情報を交換した。 来年度は上記の実験プログラムを用い経済学実験を実施し、その分析と理論研究を行う予定である。
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