以下の研究を行った。 (1)産業連関表と固定資本マトリックスを使って27産業の付加価値額、一般資本ストック、情報関連資本ストックを推計した。クロスセクションデータ・パネルデータを使って、付加価値を被説明変数とするコブ・ダグラス生産関数を推計した。情報関連資本の生産弾力性は正であり、情報関連資本の限界生産力は一般資本の10倍程度であることがわかった。 (2)情報技術が産業構造に与えた効果を産業連関分析によって検討した。83産業をIT産業、情報通信サービス産業、情報支援財産業、非情報物財産業、非情報サービス業の5グループに分類した。IT産業の内部乗数1.29(1995年)は物財産業の1.57より小さいが、その増加幅は大きく、ITは日本経済の牽引役を担う可能性のあるグループと考えられる。IT産業は情報通信サービス業、非情報通信サービス業との結びつきを強めている。 (3)上場企業約1500社に対してアンケート調査を実施した。調査のねらいはIT投資が企業価値の創出や生産性向上にどのような効果を持つかを、意思決定、情報関連費用の管理・評価方法、従業員のスキルとの関連で明らかにすることである。日米の先行研究と同様に、回答企業に対して、付加価値、労働投入量、資本ストックを有価証券報告書から作成し、コブ・ダグラス生産関数を推計した。その結果情報化投資と人的資本との相互補完的な関係は、日米いずれにも認められる。しかしIT化・人的資本と企業組織との関係は、本調査では米国および企画庁の結果と逆になった。日本においては、情報化と人的資本は、組織における意思決定のさらなる分権化ではなく、意思決定の集権化と結びつく時、生産性の上昇が期待できる可能性が高いことを示唆している。
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