昨年度に引き続き、女性の結婚・出産・就業選択についての動学的選択決定モデル(Dynamic Discrete Decision Model)による推定を行った。日本のパネル・データについては、2年間の調査データを追加し、1993-98年の24才から39才のサンプルについて、また、未定稿論文へのコメントと分析データの追加を考慮し、就業状況として育児休業を追加した。 推定結果からは以下のような内容が判明した。(1)就業については、収入以外の効用は一般に負となったが、大卒ではこの効果は小さく有意性も低い。(出産等でいったん退職後)再就職を希望した時にフルタイム職に再就職できる確率の推定値は大卒で約18%、その他で約13%であった。(2)結婚については、効用は有意に負と推定されている。(3)子供については、末子が2歳以下の時の追加的なコストが特に就業中の時に大きく推定されている。子育てコストと効用の総合的推定値としては、高卒・短大卒では第2子・第3子では正に有意であるが、第1子ではフルタイム就業の時やや負に有意である。韓国についても、類似の結果となっているが、推定結果が一部不安定でありさらに精査中である。他の国はデータ入手に手間取った経緯から引き続き分析中である。 また、以上の推定結果による政策シミュレーション結果は以下のとおりである。(1)男女間の賃金格差が小さくなると婚姻率が低くなる。(2)同様でフルタイム就業継続率が上昇する。(3)育児休業手当ての改善による出産率・就業継続率の上昇効果は大きくない。
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