日本・韓国・ロシア・ジャマイカの4力国の世帯調査個票データを使用して、女性の結婚・出産・就業に関する選択的行動の分析を行っている(4力国中、ロシア・ジャマイカについては現在、分析継続中)。日本(「消費生活に関するパネル調査」1993-1998使用)・韓国(「Korean Household Panel Study」1993-1998使用)についての分析結果は論文にまとめて投稿準備中であり、結果概要は以下のとおりである。 (A)結婚・出産・就業の離散選択モデルによる分析結果によると、(1)高い教育は晩婚・少子・就業を促す。(2)韓国女性では結婚については年齢、就業については夫の収入や子供の有無等の家計の状況が影響する。(3)韓国では夫の収入が高いと子供の人数が多くなるが、日本では高学歴の夫の場合子供の数が少なくなる。 (B)動学的選択決定モデル(Dynamic Discrete Decision Model)による推定結果によると、(1)就業については、収入以外の効用は一般に負となったが、大卒ではこの効果は小さく有意性も低い。(2)(出産等でいったん退職後)再就職を希望した時にフルタイム職に再就職できる確率の推定値は大卒で約18%、その他で約13%であった。(3)結婚については、効用は有意に負と推定されている。(4)子供については、末子が2歳以下の時の追加的なコストが特に就業中の時に大きく推定されている。子育てコストと効用の総合的推定値としては、高卒・短大卒では第2子・第3子では正に有意であるが、第1子ではフルタイム就業の時やや負に有意である。日本と韓国の有配偶女性の比較からは、(1)低収入の仕事は収入を除くと負の影響があるが、高収入の仕事では韓国・日本ともにこの傾向が小さくなる。(2)第1子・第2子はコストより恩恵の方が大きいが、第3子以降では日本では恩恵が小さく韓国ではコストの方が高くなる。韓国では男の子の価値の推定値が大きい。
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