今年度は、まず研究の第一段階としての一次データの収集をもっぱら行った。まず6月に本件調査村出身で日本に出稼ぎに来ている労働者のインタビューを、彼女の職場のある静岡県富士市において行った。その際の資料は、次年度以降のデータ分析の段階で海外出稼ぎ労働者の意思決定様式を考察する上での背景情報として使用される予定である。7月には共同研究者であるJames Anderson教授とともにフィリピンの調査村を訪れ、個別家計調査の準備段階として、現地調査補助者の面接・採用交渉、現地カウンターパートとして家計調査監督を依頼する地元の小学校長との間での調査の進め方に関する打ち合わせ、及び村全体を歩いて個別家計調査に関して出来るだけ多くの住民に協力を依頼すること等を行った。その後、Anderson教授との間で個別家計調査質問表を作成し、9月の第2回目のフィリピン訪問時に本調査を開始した。家計調査項目としては、前回の1994年次と同様、家族構成と各人の学歴、職業、各世帯の保有資産、農業生産活動、所得などの項目を含むが、それらに加えて、世帯員全員の海外出稼ぎ労働に関する詳細な調査項目、及び現在保有する土地の取得の経緯に関する調査項目を追加している。9月の段階では、約1ヶ月村に滞在し、現地調査補助者のトレーニングおよび村に住む全世帯の世帯主名の特定を行った後、6名の調査補助者がそれぞれ個別訪問によって質問表にもとづく家計調査を開始した。その後11月にもう一度村を訪問し、9月以来現地で継続していた家計調査の進捗状況を確認し、約7割方の調査票の回収をすることが出来た。その後も現地では調査補助員による家計調査を継続し、2001年3月時点で約600世帯の対象家庭のほぼ8割方に関して個別調査票の回収を完了した。
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