今年度は、利子率と配当率の変化を源証券が従う確率過程のドリフトの変化にいかに帰着するかを、漸近展開により求めることを目標とした。上記漸近展開を行う際困難な問題の一つにマルチンゲール測度の基での期待値計算がニューメレールと当該派生証券価格の従う確率分布との同次確率密度のもとでの計算となることがある(これは特にマルチファクターモデル等の場合、可成りの計算を必要とする)。そこで、今年度はJamshidian(1990)で提唱されたForward Risk Adjusted Measure下に於けるボンド価格決定問題のMultifactor Modelへの拡張を考察してみた。結果は岳進との共著論文"Two Factor Forward Risk Adjusted Maesure and The Pricing of Derivatives"にまとめてある。ハリソン・プリスカ流のリスク中立測度のもとで派生所見価格を求める場合ニューメレールと派生証券価格との同次確率密度を導出する必要がある。しかし、Forward Risk Adjusted Measureのもとではニューメレールが期待値の外にでるため計算はドラスチックに簡略化される。Jamshidianは以上のアイディアをOne Factor European Modelに適用し、更にAmerican Typeへ応用するためにArrow-Debreu State Price Modelを導入している。我々の研究はJamshidian ModelをMultifactor Modelへ拡張した。今年度はEuropean Typeの結果が求まりそれを纏めたのが上記論文である。
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