本研では以下の項についての知見を得た。 1.新しいタイプのバリアオプション創設とその価格決定: これまで一般的であったバリアオプションはUnderlying Brownian Motionのタームでは直線、ないしはコンスタントなバリアしか想定していなかった。一方、ブラウン運動の変動は経過時間の平方に比例する。従って、ブラウン運動に対し時間の平方をバリアとして持つオプションを考えることは合理的である。しかし、この問題の難しさは、この様なバリアに対するFirst Passageに関する確率計算である。本研究ではSiegmundやMorimotoにより求められた漸近展開を用い比較的簡単な公式を求めることが出来た。 2.1で求めたバリアオプションの離散時間バージョン: 連続時間モデルに於けるバリアオプションでは当該株価の変化を連続的にモニターする必要があるが、それより、毎日の終値で判断する方が自然である。そこで、1で考案した問題の離散時間バージョンを考察した。基本的な道具としてはTakahashi-Woodroofeによる非線形更新理論の漸近展開である。本研究の当初の目的であるアメリカ型オプションへの拡張に付いては現在も進行中である。Lai等により求められた結果と組み合わせることにより数値計算法に基づき達成する予定である。 3.ジャムシディアンモデルをマルチファクターに拡張 ジャムシディアンのForward Risk Adjusted測度を用いることにより派生証券価格決定は有意に簡略化される。元々のフレームワークでは1ファクターモデルであったものを、ここでは2ファクアーに拡張した。この結果2-factor Convertible Bondの価格計算は格段に簡略化された。
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