研究課題
基盤研究(C)
本研究は、日本、ドイツ、イタリアの土地・住宅問題について、人口住宅センサスをはじめとする各種統計資料を用いて、社会統計学的視点から、国際比較研究を行うことを課題とする。研究成果はつぎの3つの分野にまとめられる。(1)土地・住宅所有事情の各国比較日本、ドイツ、イタリアの首都および中規模・歴史都市について、職住近接型・遠隔通勤型と持ち家志向型、賃貸志向型により都市類型を区分し、社会統計学的視点からの記述統計的説明を試みた。都市において、イタリア、ドイツが職住近接型となっているのに対して、日本では遠隔地通勤型の傾向が大きいのは、都市形成のあり方との関連が強く、ドイツ・イタリアが中規模分権型の地方都市形成が進んでいるのに対して、日本では大都市圏への集中が極度に進んでいることに依る。持ち家志向については、イタリアと日本に共通してみられるが、これは世帯類型のあり方とも強く関連しているものと考えられる。とくにドイツでは単身世帯の比率が高く、そのことが都市部での高い賃貸比率と強い相関を持つ要因になっている。ただし、ドイツにおいても東西統合後徐々に持ち家率の上昇が見られる。(2)住宅所有と世帯構造所得分布・資産分布および住宅所有と世帯構造の関係について、各国の所得統計を手がかりに分析した。日本では、世帯主の年齢別にみて所得、資産分布のあり方が異なることがみられた。ドイツ、イタリアについては世帯構造との関連が大きいことは(1)で見たとおりである。(3)集中解析による分布研究の方法所得分布の分析方法として、ローレンツ曲線や、ジニ係数を用いた分析の有効性は、近年の所得格差論争において示されいてる。本研究では、日本における所得格差の拡大をどうみるかを巡る論点にコミットしつつ、「全国消費実態調査」「家計調査」をもちいて、年齢別ジニ係数の計測、ジニ係数の変化の要因別寄与度分析を行った。これにより、所得格差要因における高齢層の比重の増大の解釈について、批判的検討を行った。その成果を「1980年代以降の所得格差拡大の高齢化要因について」(吉田忠編『生活空間の統計指標分析-人口・環境・食料--』所収)として公表した。
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Statistical indices analysis for the life space (YOSHIDA, Tadashi (ed.)) (Sangyo-tokei-kenkyusha Pubisher)
ページ: 278-302