本研究の目的は、EU諸国の最新の産業連関表を検討・分析しつつ、70〜80年代だけではなく、90年代までも展望しうるような新たなEU国際産業連関表を作成・分析することである。平成12〜13年度は、最新のデータである90年代の貿易データや各国産業連関表の入手と検討を行った。そしてその研究を基に、研究最終年度にあたる本年度は、本格的な国際産業連関表を試作し、様々な分析を試みた。 EU国際産業連関表として作成したのは、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、デンマーク、アイルランド、スペイン、ポルトガルの10カ国を対象国とし、各国とも25部門の共通産業分類に内生部門を調整した巨大な表(内生25部門×10カ国)である。時系列でも分析が可能なように、1985-1990-1995年の接続表も完成させた。この作成にあたって、各国の産業連関表はもちろん必要であるが、どうしても入手できないものに関しては、EU統計局のEURO法によって推計を行った。これらの基礎データをもとに、財貨やサービス貿易の統計によって輸出ベクトルを相手国及び財貨・サービス別に分割し、相手国のEU域内輸入表の構成比を参照しつつデータを埋め込んでゆき、最後に行和・列和バランスを調整した。この生産者価格評価の産業連関表を用いて、単一欧州議定書(1986年)〜市場統合(1993年)を経てEUの第4次拡大(1995年)に至る過程を、主として相互依存・連関の変化という観点から分析・考察した。さらに付帯研究として、アジア経済研究所の作成しているアジア国際産業連関表との比較も試みた。連関度・相互依存度はEU諸国の方がいずれの年も高く、特にスペインの域内化が顕著であること、しかし1995年には両地域で相互依存度が若干低下していることが看取された。今後、分析結果だけではなく国際産業連関表自体も公表する予定である。
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