研究概要 |
自動車や電気・電子機械などの組立産業では、これまで巨大機械装置の導入と作業の細分化によるライン生産方式を推進する傾向が支配的であった。しかし、近年、これとは異なる生産方式(ベルト・コンベアを廃止したセル生産方式や一人生産方式など)が広がりつつある。本共同研究は、この新しい動向を、日本と欧米の最新の文献・資料の整理・検討と日本国内の工場実態調査にもとづき精査し、今後の新しい工場生産方式のあり方を展望することを目的としている。研究の最終年度である本年度は、第一に、前年度からの継続として日本と欧米の生産方式に関する文献・資料収集と、その検討・整理をすすめ、とくに、スウェーデンの自動車産業で試みられた組立労働の新しい編成とその学習理論に関する文献(Lennart Nilsson, "Alternative for assembly work" Lecture in Tokyo, April 2000)の日本語への翻訳作業を完了させた。第二に、ベルト・コンベアを使わずに新たな生産方式を導入している日本国内の工場に対する補充調査を実施した。具体的な調査対象は、いすゞ自動車(株)川崎工場と長浜キャノン(株)である。前者では、企業組織の再編成の直前ということもあり十分な資料が得られなかったが、後者では、セル生産方式に関する比較的まとまった情報が得られた。第三に、日本で比較的豊富な情報の得られた長浜キャノンにおけるセル生産方式を、スウェーデンのボルボ・ウッデバラ工場で開発されたリフレクティブ生産方式との比較の視点から分析し、その共通性と差異、さらにはその可能性について、スウェーデンのヨーテボリ大学で開催された「スウェーデンと日本の経営慣行の比較」と題する第3回国際セミナー(2001年9月)と、東北学院大学で開催された社会政策学会第103回大会・個別報告分科会で、浅生が報告した。
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