本年度は商店街を対象とした「商業集積にかかわる調査」を行い、162商店街から回答を得た。 調査結果は以下の通りである。(1)立地環境は、駅周辺型で落ち込みが最も大きく、ロードサイド型、住宅背景型、市街地型に向かうにつれて、相対的には良くなる。近隣において若い人の増加が見られ、主として徒歩で行くことができる商店街の景況が良い。逆に人口が減少し、高齢者の比率が高く、主としてマイカーで行くことになる商店街の景況が悪い。 (2)集積構造は、商店数の多さだけでなく、商業店舗比率の高さが商店街の景況に影響している。注目すべきは「最寄品中心」商店構成の商店街のいくつかが繁栄し、「買回品中心」商店構成の商店街が衰退していることである。顧客の回遊性に関しては、商店街間の回遊性が強くあるほど、商店街の景況はよく、商店街内の回遊性は景況とは関係ない。 (3)商圏規模が相対的に大きい商店街が苦戦しているが、1日当たり来街者数が「1千〜1万人」クラスよりも多ければ、景況がよくなる。客層については若いほど商店街はよい景況にあるが、性別構成では一義的な説明が困難である。固定客比率が低いほど景況は良く、繁栄商店街への来街者数が一番多い曜日は、日・祝日であった。 (4)商店街は空き店舗率が一段と高まり、景況が厳しいほど、大型店出店の悪影響を受けている。ただし大型店の撤退は、この時点ではまだ商店街の景況に反映するまでにはいたっていない。大店法から大店立地法への移行は、大型店出店を加速させている。 (5)いずれの商店街でも数は少ないものの売上を伸ばしている店舗がある。商店街という空間的集積構造の再構築にあたっては、やはり商店街組織の強化が必要である。リーダーシップや次世代リーダーの存在、組合員同士の連携や協力は、商店街の活性化のために不可欠である。そして青年部の存在が商店街を活力あるものにしていることや、婦人部の活躍が商店街活動の底支えとなっている。 (6)近代化事業やイベント事業についても売上げや集客効果を発揮していないにもかかわらず、実施しなければ衰退に加速がかかるといった状況に、商店街は追い込まれている。ただしTMOの設立と商店街の景況との関係が比較的良いようであり、当面はTMOの活動の方向性に注目しておく必要がある。
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