研究概要 |
本研究は,いわゆる「社会福祉改革」といわれるもののプロセスのダイナミズムを「公私関係変容の構図」という視点で分析・整理し,今般の「社会福祉基礎構造改革」で一段落した「改革」の全容が,はたして何から何へ向かう方向性を有するものであったかを論理的に整理すること,そして,今後の社会福祉の流れである「地域福祉」の中で求められる戦略的課題を明らかにすることを目的としたものである。 3年計画のうち平成12年度では,1980年代を中心として,「改革」の各時点で主導的な役割を果たした研究者や行政関係者へのヒアリングを中心に,改革における課題とその背景,改革を推進した力学,改革の性格を捉える理論的な視点などについて,事実収集に努めることを課題とした。あわせて,先行研究における問題の取り扱われ方について分析・整理することを課題とした。時期区分の目安としては,第1次石油危機から第2次臨時行政調査会の設置まで,第2次臨時行政調査会の第1次報告から社会福祉関係3審議会合同企画分科会設置まで,合同企画分科会の設置から福祉関係8法改正まで,これ以降の基礎構構造改革・社会福祉法制定まで,の4期に分け,それぞれの段階に即した改革過程の整理を行った。 聞き取り調査では,次のような成果を見た。 (1)この全期間を通じて,中央社会福祉審議会等の委員として改革を理論的にリードしたと考えられる社会福祉政策の研究者(匿名)から,社会福祉実践の課題とこれを理論付けした研究作業の流れ,そして,これら理論作業がどのようにして,またどの程度まで厚生行政の政策過程に反映したのか,詳細な証言を得た。 (2)第2次臨時行政調査会の中間答申が出された直後まで厚生省社会局の更正行政および障害福祉行政関連の政策現場に関与した行政官から,厚生省の臨調路線への対応のあり方,医療費問題と社会福祉改革議論との関連,国際障害者年への取り組みと社会福祉改革との関連等について,詳細な証言を得た。 (3)第1次石油危機を挟んで厚生省社会局の予算関連を担当し,その後,国民年金・国民健康保健関係の行政現場で中心的な役割を担った行政官から,社会福祉改革の背景となった財政事情および厚生省の予算編成の考え方について、詳細な証言を得た。 (4)80年代後半の社会福祉改革の1つの目玉であった国庫補助率の変更が,市町村の福祉行政現場にどのような影響を与えたのかについて,岡山県倉敷市の当時の在宅福祉担当者から詳細な証言を得た。 (5)上記時代の社会福祉改革および社会福祉のパラダイム変化に関する主要な先行研究を整理し,分析した。
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